すでにCubase使いの方やCubase導入を検討している方はご存知のことだと思うが、Cubaseには機能や同梱のプラグイン数別にいくつかグレード違いがある。
Cubaseのグレードによる違い
上から順に高機能で、それぞれざっくり特徴を独断と偏見で記載する。
Cubase Pro
プロやプロ級の人はもちろんだが、後述するように初心者にも断然オススメできる「本物のCubase」がこれ。
Cubase Artist
Proの機能を部分的(だいたい半分くらい)に解禁したグレード。Cubaseの話題に限らず、日本語的にも「プロとアーティストの違い」を説明するのは困難だと思うが、お察しの通り微妙な立ち位置。
11以前のPro、Artistにはハードウェアキーが必要
バージョン12からはオンラインでのライセンス管理が導入されたが、11以前のProとArtistはハードウェアキー「USB-eLicenser Steinberg Key」の購入が別途必要となる。
Cubase Elements
実売1万円弱で買えるコスパの良い入門グレード。操作に慣れる目的では良いが、DTMでの曲作りに少し慣れてくると、トラック数の制限など割と早い段階で不満が出てくるはず。付属音源やプラグインは最低限のものはあるが、追加音源が欲しくなる可能性が高い。
Cubase AI
スタインバーグ製のオーディオインターフェースとかを買うと付いてくるお試しグレード。付属音源やエフェクトはわずか。単純な録音や編集程度に使うイメージ。
Cubase LE
筆者は使ったことがないが、一部のDTM製品などにバンドルされてくることがあるお試しバージョン。単純な録音や編集程度に使うイメージ。AIよりさらに限定的。
・・・というのが、個人的なイメージを含めてのCubaseのグレード違いだ。Cubaseはグレード以外にも10とか9とか8とかのバージョン違いがあるが、バージョンが上がってもお下がりでProの機能がArtistやELEMENTSなど下位グレードに降りてくることは基本的にない。
Proの機能を使いたければ、やはりProを買うしかないのがCubaseの掟なのだ。
初心者を含む、全てのDTMerにオススメなのは断然Pro
初心者の方や、Cubaseを初めて導入しようと考える人は、当然どのグレードにするか迷うはず。だが、予算が許すならば最上位のCubase Proが断然オススメ。いや、多少無理すれば買えるくらいの予算感なら、Proを買った方が結果的にお得だと言える。
名前の通り、Proはプロが仕事で使うことにも耐えられる最上級グレードなわけだが、「プロ」というと「初心者の自分には使いこなせるわけない」と萎縮してしまう方もいるかも知れない。
しかし、Cubaseのグレード違いというのは、プロが業務の音楽制作で使う高度な機能だけでなく、普通に初心者でも日常的に使いまくる部分に大きな違いがあるのだ。
以下に、初心者であっても恩恵を受けられる部分を紹介してみる。
Cubase Proは付属音源や付属エフェクトが大量!!
Cubaseの下位グレードとの大きな違いがこれ。
DTMで曲を作るには何はともあれ音源であったり、クオリティを上げるためにはエフェクトが必須。その選択肢が多いというのは、初心者にとっても重要なメリットと言える。
Elements以下のグレードだと最低限の音源(VSTi)と、コンプレッサー等の最低限のエフェクト(VST)しか付属していない。色々と音作りをやっていくと、音源とエフェクトが最低限しかないというのは、最終的な楽曲のクオリティにも関わるし、音作りの幅も限られてしまうという現実に失望してしまう時が割と早い段階でやってくる。
付属音源やエフェクトが少ないという弱点を補強するために、楽曲制作をしつつも、夜な夜な海外の怪しいサイトからフリーの音源やエフェクトを探す作業を毎日しなければならなくなってしまう。
だが、そうしたフリーで配布されている音源やエフェクトは、モノにもよるが、経験的にはメーカーが販売している有料製品に比べると、動作が怪しかったりして、フリーズや高負荷の原因になるものがすごく多い。フリーズの原因を探っていったら、夜な夜な必死で導入したフリー音源やフリープラグインのせいだった・・・ということが何度もある。
Cubase Proが初心者の楽曲制作を加速する
自身が経験したことだが、結局は中途半端なグレードを買うよりも最初からCubase Proを買っておけば、プロクオリティの音源やエフェクトが初めから大量に含まれていることがあり、徒労に終わるような音源やプラグイン探しの旅に出かけることなく、楽曲制作に時間を割くことができる。
もちろん、楽曲のジャンルなどによっては、さらに音源やエフェクトを追加したくなることはいずれあるだろう。しかし、それはDTMをやっていくうえで、ずっと付いて回る問題とも言えるので、その段階が来たらその時に検討すれば良いだろう。
定番の追加音源、プラグイン集
DTMerの間で定番の追加音源、プラグイン集と言えばNative Instruments社のKOMPLETEシリーズ。Cubase Proに加え、KOMPLETEがあれば、一般的な楽曲制作で音源周りに困ることはほぼなくなるだろう。
Proはトラック数が下記グレードと違って無制限!
楽曲を作りこんでいくと、どんどん増えていってしまうのがトラック(パート)だ。
なにしろ、ドラムだけでもスネアやハイハット、キックなど、それぞれの楽器ごとに分けて作ると10トラック程度になることも珍しくない。下位グレードではトラック数に制限があり、割とすぐに制限に引っかかってしまう。例えば、有料製品でもCubase ELEMENTSではソフト音源での打ち込みに使うVSTi用のインストゥルメントトラックは24個までだ。
上記のように、比較的、パート数が少なくて済むPOPS系の曲であっても、ドラムを分けたりすると大抵の場合は足りなくなってしまい、トラック数の節約を考えなければならない。
ある程度のDTM経験がある方ならわかると思うが、ギターやシンセのパートでも、サビの部分だけエフェクトを強めに掛けたいなど音作りの都合でトラックを分割したい場合も多いだろう。そういった場合にトラック数が無制限というのは、実作業において大きな利点となる。実際にはトラック数はPCスペックにも左右されるわけだが、DAWの仕様としてProは無制限というのは制作においての大きなメリットだ。
作曲をサポートする機能もProは豊富!
細かく列挙していくとキリがないが、コードアシストなど作曲に関する機能もProが一番充実している。
Cubaseで先進的な機能はProだけに搭載されていることが意外と多く、DTMer向けのサイトやCubaseの解説本で紹介されている良さげな機能が「実はPro限定の機能だった」・・・というガッカリな経験が個人的には何度もある。
今回紹介した部分を考えても、やはりCubaseを使うならばProに限るだろう。本物のCubaseとはProのことを指すのではないか? というのが個人的な経験の上での意見である。