TANCHJIM(タンジジム)という2015年に立ち上げられた中国のオーディオメーカーをご存じだろうか?
中国は“世界の工場”として昔から世界各国のメーカーから製品の製造を受託してきたが、近年では受託するだけでなく、そのノウハウを基にして自前で製品開発を行う新興企業が増えているという。
特に香港の北側にある深センという街は、世界最先端クラスの技術都市として、世界中から優秀な技術者が集まるなどして目覚ましい発展を遂げている。
TANCHJIMもそうした背景から生まれた中国の新興オーディオメーカーの一つ。
日本でもヨドバシカメラなどの大型量販店やネット通販で製品を買うことができ、今回はエントリーモデルから一つ上のクラスにあたるTANYAというイヤホンを購入したのでレビューしてみたい。
実売3500円の固定観念を超える音質

価格帯で言うとポイントを差し引くと実売3500円程度である。同価格帯だとfinal E2000などがあり、少し上の価格帯としてはE3000など優秀な製品があるが、筆者はE3000を4年ほど聴き込んでいるので、特にE3000との違いを伝えられればと思う。
カタログスペックとしては、有線タイプの当たり障りない普通のイヤホンという印象だ。
【仕様】
7mmダイナミックドライバー
オープン型
振動版素材PEEK
再生周波数帯域 20~42,000Hz
感度 112dB
インピーダンス 16Ω
ケーブル Litz 4N OFC
入力プラグ 金メッキ3.5mmステレオミニ
(メーカー公式サイトより)
似たようなスペックのものは多いと思うので、実際に聴いてみないとその実力は判断できないと思うが、いくつかの曲で視聴した感想をありのまま書くと、実売3500円の固定観念を超える音質といったところだ。
リスニングからDTM等のモニター用途まで使える万能タイプ

店頭で同社エントリーモデルにあたる「ZERO」というイヤホンも試聴したが、確かに評価が高いだけあって明るく鮮明な音質ではあったものの、個人的には中高域が誇張されていて、曲によっては聴きにくいと思ったのと、モニター用途には使えづらいと思った。
しかし、一つ上のランクにあたるTANYAの場合はどうかというと、ZEROが持つ独特の煌びやかな色付けを少し残しつつも、低域~高域までフラットに近いバランスに音作りされているため、アニソンやゲームなどのボーカル曲、一般のポップス、ロック、ジャズ、ピアノ曲など、あらゆるジャンルで快適に視聴することができるのだ。
フラットに近い音質のため、DTMや楽器などのモニター用途にも使用しやすいのも特徴と言えるだろう。
15g以下と軽量で物理的にも聴き疲れしづらい

筆者は実売1万5千円クラスのインナータイプのイヤホンも所持しているが、音質はさすがに悪くないものの、インナータイプのわりに重くて大振りなのがネックとなり使用頻度が下がっているという現状がある。
イヤホンやヘッドフォンは体に装着して使用するため、音質はもちろんのこと、耳が痛くならないことなどフィット感が音質と同等以上にとても大事なのだ。
その点、TANYAは15g以下と非常に軽いため、装着していることを意識させないほど。
ケーブルの取り回しもよく、家で使うにも携帯オーディオプレーヤーなどで使うにもちょうどいい長さ。ケーブルによる不快感を感じさせないようによく出来ていると思う。日本メーカーのイヤホンでも、ケーブルが残念なイヤホンやヘッドフォンは意外と多い。
TANYAの右と左の見分け方
音質も使い勝手も価格帯の固定観念を大幅に超えているTANYAだが、一つ欠点があるとしてたら右と左がわかりにくいということだろう。
見分け方はTANYAと製品名が書いてある方が左で、TANCHJIMとメーカー名が書いてある方が右である。
ただ、薄暗いところでは判別がかなり難しいので、気にならないのであればわかりやすいように目印を付けた方がいいかもしれない。
耐久性については未知数だが、イヤホン本体には1年間、ケーブルなどは半年間の保証が付いている。
安くて高音質で使い勝手の良い有線イヤホンを試してみたい人には、個人的にはぜひオススメしたい製品だ。