2年半悩んだ挙句、ついに購入
Native Instruments社の音源やプラグインのバンドル製品である「KOMPLETE」シリーズのエントリークラスに位置する「KOMPLETE 11 SELECT」を実に2年半ほど悩んだ挙句ついに導入したので、それぞれの製品について可能な範囲でレビューをしたい。
なお、DTM歴3年程度の人間の率直な個人的意見。
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- 1. 2年半悩んだ挙句、ついに購入
- 2. で、それってどんな製品?
- 3. 単体19,800円相当のMASSIVE
- 4. ドラム音源のDRUMLAB
- 5. ピアノ音源のTHE GENTLEMAN
- 6. オルガン音源のVINTAGE ORGANS
- 7. エレクトリックピアノ音源のSCARBEE MARK 1
- 8. レトロ系サンプリングシンセのRETRO MACHINES MK II
- 9. 物理的モデリングシンセのREAKTOR PRISM
- 10. 意外と使いやすいアナログシンセ、MONARK
- 11. パーカッション音源のWEST AFRICA
- 12. バスコンプレッサーのSOLID BUS COMP
- 13. ディレイ・エフェクトプラグインのREPLIKA
- 14. まとめ KOMPLETE 11 SELECTは買いか?
で、それってどんな製品?
それなりにDTM、音楽制作をやっている人なら一度は聞いたことがあるだろうNative Instruments社の製品。DTM界ではよくあるが、11製品も入っていているのにMASSIVEだけでもほぼ元が取れそうなくらいのディスカウント価格。単体で買ったら10万円以上するのに、セットだと実売24,800円程度という異様に安いというやつ。とは言っても、MASSIVEも時々半額セールをやっているので、どの程度お得なのかは使ってみないとわからない。
製品を買うと小さい箱の中にシリアル番号の書かれた紙とUSBメモリが入っている。製品自体はネットからダウンロードする。全部で25GB程度あり、環境によっては数時間程度かかる場合もある。インストールしてからも色々あるのだが、インストール段階からそれなりの試練がある。
何の気なしにHDDにインストールすると後々後悔すると思うが、大容量のサンプリング音源などは動作が重たいので、高速にアクセスできるように、なるべくSSDにインストールした方が良い。
単体19,800円相当のMASSIVE
アマチュアからプロまで幅広い人気の本格派シンセであるMASSIVE。DTM系のサイトでシンセのテクニックを解説している場合はMASSIVEであることが多いことからも、使っている人が多く解説が求められているシンセなのだろう。おそらく、デファクトスタンダードと言っても過言ではないシンセである。
画像を見てもわかる通り、様々なパラメーターを駆使して音作りをゴリゴリしていくタイプのシンセ。MASSIVEを導入すれば即プロみたいな格好いいシンセサウンドが出せるかというと、それは難しいと言わざるを得ない。
ネットで情報収集してもMASSIVEに挫折した、MASSIVEが使いこなせないというような声は多く目にする。それもそのはずで、プロが仕事で使えるレベルの機能があるので仕方がない。プリセットも沢山付属するし、ネットでプリセットをダウンロードすることも容易だが、それでもイメージしたサウンドを作り出すのは、初心者にとってはかなりの経験と時間が必要になるだろう。
DAWに付属するシンセやフリーのシンセに物足りなさや不安を覚える場合は、使って損することはないシンセではあるが、使いこなすにはそれなりの覚悟が必要だろう。他のサンプリング系シンセと違い、インストール容量は小さいし、それほどCPUなどPCスペックが求められないのが救いか。
定番エレピっぽいクリーンな音から、何が何だかわからないグデグデ系の音まで出てくる、マッシヴ過ぎるシンセ。マッシヴな人向け。
ドラム音源のDRUMLAB
DRUMLABには相当期待していた。KOMPLETE 11 SELECTの製品群の中で、最も期待していたと言ってもいい。筆者にとってはDAW付属のものを除けば、初めての有料ドラム音源だからだ。しかし、結論から言うと、今のところだが期待はあっけなく裏切られた。
DRUMLABの特徴はアコースティック系の音とデジタルっぽい音を混ぜることによって、音色を自在に操れること。
しかし、大容量RAMと最新SSD搭載など、そこそこスペックの高いPCでも、とにかく動作が重い。音を混ぜるとかそんなことをしようと思わなくても、プリセットのドラムキットを切り替えるだけでも、数秒~10秒程度の時間がかかり、スムーズに切り替えられない。
CUBASE付属ドラム音源のGroove Agentだと、再生中にリアルタイムで切り替えて良さげなサウンドをチョイスしたりできるのだが、DRUMLABで同じことをやると、再生は止まるし、CUBASEやOSごと止まってしまう場合があるので、再生中にエディットすることは実用的ではない。超ハイスペックなPCならどうか知らないが、超ハイスペックなPCを買えるくらいの予算があれば、他のドラム音源を・・・と考えてしまうのだ。
使い勝手はともかく、サウンド自体の音質は悪くはない。しかし、ドラムキット全体を賄うというよりは、キックだけとか、スネアだけとかの使い方が現実的な気がする。リアル志向というよりは、打ち込み系の音。
ピアノ音源のTHE GENTLEMAN
アップライトピアノの専用音源である。THE GENTLEMANという名前の通り、紳士っぽい重厚でリッチなピアノサウンドである。
どのくらいリアルかというと「DAW付属の音源と同時に鳴らすとリアル過ぎて浮いてしまうくらい」のリアルさである。馴染ませるスキルが必要。リアルなのは無条件に良いことだと思っていたが、ピアノ主体の曲では真価を発揮するであろうが、POPS系の楽曲でのピアノパートにこれを使うとなると、EQなどで適度にリアルさを無くさないと違和感が出てしまう。低音をバッサリ切ったりすると、結局、付属音源みたいな音になってしまうし・・・。
DAW付属音源のピアノの方が曲全体への馴染みが良いケースが多いので、意外と使い所が難しかったりする。しかし、あくまで使う側の問題であって、悪い音源ではない、と思いたい。
動作はDRUMLABよりはマシだが、リアルなぶん重たい。
オルガン音源のVINTAGE ORGANS
インターフェースからしてオルガンっぽい見た目。きっと色々なことができるのだろうが、本領発揮させるにはオルガンという楽器の知識が要求されるような気がする。
オルガン主体の曲の他、ロックやポップス系で良い感じにオルガンを鳴らしたいというケースにも対応できるだろう。教会にあるようなオルガンからジャズ系のオルガンなども収録されている。
エレクトリックピアノ音源のSCARBEE MARK 1
音源の名前からは何の音源なのかサッパリわからないが、エレクトリックピアノのサンプリング音源である。
単体購入で8,780円の製品なので、重厚でリッチなエレピサウンドを出すことができる。THE GENTLEMANと違い、サンプリング音源でもこちらの動作は軽め。ジャズなどのインストゥルメント曲に合うのではないだろうか。
レトロ系サンプリングシンセのRETRO MACHINES MK II
シンセの歴史において伝統的、代表的な製品の音をサンプリングしている音源。おそらく名機とされているシンセたち。エレピ系からパッド系、ビニョビニョしたシンセっぽい音まで幅広い。
こちらはMassiveと違ってサンプリング系なので、パラメーターは少なく、初心者でも比較的扱いやすい。プリセットをポチポチしているだけで、実戦で使える音が出てくる。
物理的モデリングシンセのREAKTOR PRISM
Massive並みにパラメーターは色々あるが、出てくる音は名前の通り全般的に軽く煌びやかで、動作も軽い。キラキラ系の音が得意なシンセ。デモ曲のようにプリセットに即戦力で使えるような音が入っているので、ゴリゴリ音作りするつもりはサラサラないよ、という人でも活躍の場があると思われるシンセ。
REAKTOR PLAYERベースで動作する。
意外と使いやすいアナログシンセ、MONARK
ここまでも似たようなシンセが色々出てきたので、お腹がいっぱいになったかもしれない。しかし、KOMPLETE 11 SELECTのバンドル製品の中でもMONARKは意外と初心者にも使いやすくて、いかにもアナログシンセな音が簡単に出せる音源である。デモ曲は元々ピアノ用に作られているので少々無理があったが、一般的なバンド構成のポップスなどでは即戦力の音源として使える。
出てくる音は伝統的なシンセ音だが、現代的なポップスなどの楽曲でもよく聴くような音で、プリセットを使えばMassiveよりも短時間でイメージする音をチョイスできる可能性が高い。個人的にはMASSIVEなどより、今のところ、実用性が高い音源。こちらもREAKTOR PLAYERベースで動作する。
パーカッション音源のWEST AFRICA
アフリカの伝統的なパーカッション楽器などに特化した音源。パーカッション以外にも、フルーツの断面みたいな形の見たことない現地の楽器などの音も収録されている。人によっては、きっとこれだけでも曲が作れる。
パーカッションやリズムに重点をおいた楽曲では重宝するだろう。ただ、個人的にもそうだし、おそらくDTM初心者でロックやポップス系の曲を作っている人には、当面の間は出番がないかも知れない。
バスコンプレッサーのSOLID BUS COMP
こちらは音源ではなくて、プラグイン形式として提供されるバスコンプレッサーである。バスコンプとは、例えばドラムの音だけとか、ルーティングを組んで特定の楽器ごとのグループに対して使う用途に特化したコンプである。
音源デモはDRUMLABのデモ曲のドラムトラックとマスタートラックにSOLID BUS COMPを噛ましたもの。効果がわかりやすいように、通常よりややキツめに掛けている。
DAWに付属してくる一般的なコンプレッサーに比べて、滑らかだけど芯がある、音楽的にまとまりのある音が出てくる・・・ような気がする。マスタートラックに使ったり、単体の音に使ったり、使い方は様々。
ディレイ・エフェクトプラグインのREPLIKA
プラグインとして提供されるディレイ・エフェクトがREPLIKAである。
音源デモはRETRO MACHINES MK IIのデモ曲と同じものにREPLIKAを挿し、プリセットを適用しただけのもの。まるで他の音色を追加したような違いだが、単なるディレイに留まらないのがREPLIKAの効果である。
音源をいじくっていても、どうにもイメージした音色にならない・・・という時に、これを噛ましてプリセットを色々と変えているだけで、イメージに近い音色がなぜか出てくるかもしれないプラグインである。
DAWに付属するエフェクターでは出てこないような特徴的なサウンドが出せるので、持っていると音作りに煮詰まった時に何とかなるかもしれない、というプラグイン。
救世主的存在で、意外と使い所がある。活躍中。
まとめ KOMPLETE 11 SELECTは買いか?
DAW付属音源に物足りなさを感じた人や、ちょっと有料音源の世界を覗いてみたいという人で、そこそこマシンパワーに自信がある人にはお勧めできる製品だと思う。
個人的にお勧めなのは、後々のスキル向上を視野に入れればMASSIVE、簡単にそれっぽいアナログシンセ音が出せるMONARK、本格的ピアノ音源のTHE GENTLEMANの3つだろう。この3つだけでも十分元が取れるし、割と個性的な音源、プラグイン達なので曲作りのバリエーションが増えるのは間違いない。
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