Wavesのマルチバンド・ハーモニック・エンハンサー『Vitamin Sonic Enhancer(以下、Vitamin)』のレビュー。
Vitaminは楽器それぞれの音に使うこともマスタリングで楽曲全体に使うことも可能で、簡単操作で倍音を付加してサウンドを“ちょっぴり“から“劇的”にまで、お好みのさじ加減で楽曲にビタミンを付け加えられるプラグインだ。
公式サイト
Vitaminが含まれているパッケージ
Cubaseにはエンハンサーやエキサイターがない!?
この手の倍音を付加するプラグインは俗にエンハンサーやエキサイターなどと呼ばれる。それぞれで微妙に意味するところは違うが、より積極的に音を目立たせる機能があるのがエンハンサーと考えるとよいだろう。
似た機能があるプラグインとしてはイコライザーがあるが、イコライザーはすでに存在している音の帯域をいじるのに対して、エンハンサーやエキサイターは倍音という、元のサウンドにはない音の周辺成分を生成するという違いがある。
人気DAWのCubaseにはイコライザーこそ様々な種類が搭載されていて、最上位グレードのCubase Proだと機能別に6種類ものイコライザーが搭載されている。
ところが、Cubaseでは残念なことにエンハンサーやエキサイターは純正プラグインとしては用意されていないのだ。記事の後半で紹介するが『Quadrafuzz v2』というVitaminに似た画画面構成のプラグインならあるが、名前のfuzzから想像できるように設定次第でもあるが、基本的にはサウンドを歪ませることで目立たせるプラグインである。
そのため、Cubaseでエンハンサーやエキサイターを使いたい場合はサードパーティーの有料プラグインを使うか、後ほど紹介するがフリーのエキサイターを使うかの選択となる。
Vitaminの使用例

この手のプラグインは実際に使って『習うより慣れろ』が有効なので、Cubaseでドラムフレーズのトラックを作り、実際にVitaminを適用してみる。

素の音だとこんな感じ。マスタートラックにリミッターだけ掛けているが、ほぼ無加工の状態。
単体で聴くと普通にドラムの音だが、市販の生ドラム系音源に比べるとバンドサウンドの中では埋もれてしまいがちな音ではある。

Vitaminを適用したのがこちら。いつものCubase付属音源とは思えない(?)ようなバンドサウンド的な音になった気がする。
Vitaminにはドラムだけでもスネアやハイハットというような楽器ごとのプリセットがあったりする。ドラム全体やマスタリング用のプリセットもあるほか、ボーカル用など様々なプリセットがある。

5つの帯域別に倍音の付加具合を調整することもできるが、とりあえずプリセットでサウンドの方向性を模索していくというアプローチも可能だ。
Cubase付属のQuadrafuzz v2について
Cubaseには残念ながらエンハンサーやエキサイターは純正では用意されていないが、Vitaminと少し近いものとしてCubaseのArtist/Pro限定ではあるもののQuadrafuzz v2というプラグインが付属している。
公式の説明だとこちら。
説明を読んでもイメージがつかないと思うので、手元にある人は実際にいじってみると早い。

Vitaminと少し似た画面構成だが、このプラグインは4つの帯域別にTapeやTubeなどの歪み効果を付け加えてサウンドを加工していく。
設定次第ではあるものの、どうしても歪みを利用しているだけに目立たせようとすればするほど原音のイメージと変わってしまうことが多いのが難点だ。
フリーだとLa Petite Exciteがオススメ

いきなり有料のプラグインは・・・という人にオススメなのが『La Petite Excite』というプラグイン。調整できる帯域はLOWとHIGHのみなものの、ちょっとした色付けや加工にはシンプルなだけに使いやすい。
他のにもフリーのエキサイター系のプラグインはいくつか存在するが、他のものを使っていた時にフリーズしたり動作不安定なものもあった。La Petite Exciteに関しては動作が安定している。筆者の環境ではこのプラグインのせいでフリーズしたことはないので、個人的な感想だが安心して使える方のプラグインと思ってよいだろう。
La Petite Excitのダウンロード先は下記となる。
Vitaminが含まれているパッケージ
今回紹介したVitaminは単品購入のほか、ミックスで役立つWavesのプラグインが多数収録されたGoldというパッケージにも収録されている。ミックスでは様々な種類のプラグインがあると技の引き出しが増えるのは確かなので、プラグインをあまり持っていない場合はまとめてパッケージ購入するのも良いだろう。