ミキシングや音作りにおいて、世間でのイメージよりも、意外と幅広く使えるテクニックがサイドチェイン(サイドチェーン)である。
Cubaseの場合は、上位グレードにあたるArtist、Proのみで使える機能。
説明はCubaseで行うが、他のDAWでも上位グレードの場合は多分搭載されているので、似たような操作で設定可能なはず。
サイドチェインの効果を聴いてみよう
サイドチェインはEDMやダンス系の曲によく使われていて、ベースがキックに合わせてウネウネと音量変化するアレのことだ。
・・・と言っても、聴いた方が早いので音を出せる環境の人は、下のオーディオをポチっと押して再生してみて欲しい。
サイドチェインなし
サイドチェインあり
実は、サイドチェインはEDM以外でも使える万能選手
サイドチェインは、一般的にはEDMなどのジャンルで多用されているテクニック。
しかし、実はEDM以外のPOPS系などのジャンルでもミキシングにおいて有効に使えるテクニックなのである。
例えば、ベースとキックは似たような中低域の周波数を持つ楽器だ。両方ともフルボリュームだと中低音が飽和状態になったり、音割れの原因にもなる。
それはマスタートラックにリミッターやマキシマイザーを挿していても起こることであり、事前にトラック段階で細工をする必要があるのだ。
そのような場合、イコライザーで干渉が少ないように周波数をズラす方法もあるが、サイドチェインも薄っすらと掛けておくことも有効である。あまりウネウネさせるとウネウネとしか聴こえなくなる(そりゃそうだ)ので、こういった場合は薄っすらと掛けるのがポイントである。
ベースとキック以外には、オーバードライブ系のギターとボーカルなど、似た帯域を使う楽器同士ならば、工夫次第でなんにでも使うことができる。
Cubaseでのサイドチェイン設定方法
例として、ボーカルをトリガーにして、バックでコード演奏するオーバードライブ系ギターにコンプレッサーをかけてみる。
狙いとしては、サビでボーカルとギターがどっちもフルボリュームで鳴ると、微妙な音割れを起こす状況だったので、それを回避することである。ボーカルの音量を優先させるために、ボーカルが大きい部分ではギターの音量を下げるロジックをサイドチェインで組むわけだ。
以下はCubase10 Proでの設定例だが、他のサイドチェイン機能を搭載しているDAWでも似たような手順でおそらく設定できる。
手順1 サイドチェインで圧縮したい側のトラックにコンプを仕込む
この例だと、ギターのインサートにコンプレッサーを設定する。違うのは矢印の箇所にあるサイドチェイン有効化のボタンを押す所だけである。ここでのコンプ設定で圧縮のされ方が変わるが、この段階では何も起きないので、ひとまず置いておく。
手順2 トリガーとなるトラックのSendsにサイドチェインを設定
手順1をすることで、他のトラックのSendsにサイドチェインが選択できるようになっている。
今回の例だと、ボーカルトラックにギタートラックのサイドチェインを設定して、最後に忘れずにポチっとSendsを有効化しよう。
手順3 コンプレッサーの設定をいい感じにする
あとはギタートラックに戻り、コンプレッサーの設定をいじっていい感じにするだけ。
普通ならば、ギター自身の音にコンプレッサーが反応するはずだが、サイドチェインを設定しているため、ボーカルの音量に連動してギターが音量変化することがわかるだろう。これがサイドチェインなのである。
まとめ サイドチェインでミキシングの引き出しを増やそう
手順だけ見ると複雑なように感じるかもしれないが、実際にやってみるとそこまで難しくはないのがサイドチェイン。
サイドチェインは積極的な音作りの目的だけではなく、工夫次第で微妙なミキシングの加減が迫られた時にも使える万能テクニックなのだ。
ミキシング沼にハマって泥沼膠着状態に陥った時などに、こっそり試してみて欲しい。