
あれは中2の夏の終わり頃だった。現在30代である筆者のその頃と言えば、身近な録音メディアと言えばカセットテープ一択だった。
そう、なぜ急にカセットテープの話なのかというと、日本の日常生活ではほとんど見ることがないカセットテープだが、イギリスでは2018年頃から再ブームが起きているという話を聞いて、ふつふつと子供時代にカセットテープを愛用していたことを思い出したからだ。
デジタル全盛の今だからこそ注目したい、手軽なアナログデバイスとしてのカセットテープについて語りたい。
“昭和の録音メディアの怪物”であるカセットテープ
「カセットテープ? なにそれ、美味しいの?」という声もそれなりに聞こえてきそうだが、それも無理ないだろう。
デジタル全盛の現在はもちろんのこと、筆者にしても高2の夏くらいにはすっかりデジタルメディアであるMD(ミニディスク。これも現存していない)に置き換わり、ぼちぼちMP3での音楽ファイルのデジタル化が当たり前に行われるようになっていったからだ。
この流れは現在にも続いていて、iPodやiTunesへ経て、今ではスマホで音楽を聴く人が多数派となっている。
筆者における90年代のカセットがある風景
中2の頃の話に少し戻る。筆者の90年代においては、好きなアーティストの音楽はレンタル屋からCDを借りてきて、カセットテープに録音して聞くのが日常だった。ソニーのウォークマンが代表的だが、携帯型のカセットプレーヤーが1万~2万円くらいで売られていた。
90年代の録音メディアと言えばカセットテープ一択だった。スーパーやコンビニ、家電店などで様々な種類のカセットテープが売られていた。さすがに2021年にもなるとカセットなんてほとんど手に入らないのでは・・・と思ったが、意外や意外。日本でも習い事などでの吹込みに便利ということでそれなりの需要があるらしく、現在でもそれなりに販売もされているという。
曲の頭出しができるCDやMD、MP3などと違って、カセットテープはそういった機能はない。まさしく一本のテープなので聞いたら巻き戻さないとならないし、再生を止めて次に聞く時は必然的に聴いていた場所から再生される。アナログそのものだが、不便なように思えて、今考えるとそれが逆に良かったりする。
アナログならではの温かみのある音
音楽好きな人がアナログメディアとして真っ先に思い浮かべるものと言えばレコードだろう。今でもアナログ盤としてレコードでもリリースするアーティストもいるし、そこにはデジタルにはない音の温かみがあるのだ。

CubaseなどのDAWには必ずと言ってよいほど、あえてアナログ風のノイズやローファイな音を再現する機能が含まれている。Cubaseで言えば付属のプラグイン「Grungelizer」がそれで、特にカセットというわけではないがレコードのノイズやローファイな音を再現することができる。
DTMでのフルデジタルでの音楽制作では、ノイズが全くない音楽を作れるにも関わらず、あえて制作上の意図でそうしたプラグインを使い、アナログっぽくすることはよく行われているのだ。
レコードにも通じるアナログっぽさ
カセットテープにもレコードに通じるアナログさがあるように思う。カセットテープはアナログメディアなので、使うテープによって音質が変わるのもデジタルにはない特徴だ。どこどこのメーカーの〇〇のテープは音が良いとか、そんな基準でテープを選びする楽しさがあるのがカセットの世界なのだ。
さすがに現在ではテープの種類は減っているものの、手軽にアナログな録音メディアとしての魅力を感じられるのがカセットの世界だろう。
携帯型プレーヤーは実売5千円前後とお手軽価格
現在でも一部で需要があるからか、歴史のあるレトロなメディアの割には新製品のカセットプレーヤーが普通に様々なメーカーから売られている。MP3への変換機能があったり、海外ではBlutooth機能がある(!)先進的なカセットプレーヤーも登場しているという。
テープは数本セットで1千円前後と、趣味のアイテムとして気軽に買える値段なのもグッド。
いつもはPCやスマホでデジタル化(そもそも制作もフルデジタルかもしれないが)した音源を聴いている人も、あえてアナログなメディアであるカセットテープで聴いてみると、デジタルの時にはない新たな発見や温もりが見つかるかも・・・しれない。
こんなレトロチックなカセットプレーヤー、デジタル時代だからこそ逆にオシャレな気がしなくもない・・・。